43歳女性における凍結胚移植と漢方薬の併用による妊娠
2人目妊娠を希望された潜在性甲状腺機能低下症患者に対する漢方治療の一症例
はじめに
本症例は、潜在性甲状腺機能低下症を有し、第1子を体外受精にて出産後、第2子妊娠を希望された42歳女性に対し、漢方治療が奏功し1回の凍結胚盤胞移植で妊娠に至った症例である。漢方薬が患者の全身状態を整え、不妊治療の成功に寄与した可能性について考察する。
症例
患者: 42歳女性
主訴: 第2子妊娠希望
既往歴: 第1子体外受精出産、潜在性甲状腺機能低下症
現病歴および治療経過
初診時、患者は第1子出産および育児による不眠、頭痛などの不定愁訴を訴え、漢方薬による改善を希望していた。凍結胚盤胞の移植を控えている状況であった。
1診目より8診目にかけて、牡蠣肉製品、亀板膠製品、および煎じ薬(芎帰調血飲去白朮・大棗・烏薬加白芍・丹参・党参・菊花・麦門冬・釣藤鈎)を併用した。患者の体調変化に合わせて煎じ薬の生薬を調整した結果、不定愁訴は改善し、体調が万全な状態で凍結胚移植が実施された。
9診目にて妊娠反応陽性が確認された。患者には流産既往があるため、妊娠後も牡蠣肉製品と煎じ薬の継続を指示した。妊娠13週まで順調に経過していることを確認した。
考察
本症例では、凍結胚移植時の患者年齢が43歳(初診時42歳)であったにもかかわらず、1回の移植で妊娠に至った点が特筆される。初診時には第1子の育児による疲労を訴え、身体的・精神的な不調を抱えていたが、漢方薬の継続的な服用によりこれらの不調が改善した。
これにより、患者は不妊治療に対し前向きな姿勢で臨むことができ、結果として妊娠という良好な転帰を迎えたと考えられる。本症例は、漢方薬が患者の全身状態を良好に保ち、不妊治療の成功に寄与する可能性を示唆するものである。
(薬剤師、国際中医師:田之上晃)
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