子宮筋腫と月経随伴症状の改善が妊娠に与える影響

1. はじめに

本症例は、38歳女性の妊活希望に対し、慢性的な月経前症候群、重度月経痛、および子宮筋腫を伴うケースである。漢方医学的診断として肝鬱、腎虚、瘀血を認め、個別の生薬を組み合わせた煎じ薬と併用療法を施行した。治療経過中に子宮筋腫の縮小と月経随伴症状の改善が認められ、最終的に自然妊娠に至ったため、その治療経過と考察を報告する。

2. 患者背景

患者は38歳女性。既往歴として子宮筋腫、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎がある。主訴は第一子妊活希望、月経前の重度な易怒性、月経痛、四肢の冷えとほてり感、入眠困難、および胃痛であった。他覚所見では辺紅中紫舌、弦脈を認めた。これらの所見に基づき、漢方診断は肝鬱、腎虚、瘀血とされた。

3. 治療方針と経過

初診時、患者の病態に対して、個別の煎じ薬を処方した。処方内容は、芎帰調血飲の基本方から川芎、白朮、烏薬、生姜、大棗、陳皮を除き、代わりに丹参、赤芍、三稜、莪朮、延胡索、紅花、桂枝、牛膝、鶏血藤を加えたものである。これに加え、自社製の牡蠣肉製品および亀板膠製品を併用した。

治療開始から1カ月ごとに患者の体調に合わせて煎じ薬の生薬を調整した。治療開始3カ月後には、婦人科での子宮筋腫の定期健診において、サイズが2cmから1cmに縮小していることが確認された。漢方薬を継続した結果、その後自然妊娠に至り、順調な経過を経て男児を出産した。

4. 考察

本症例では、重度な月経痛を呈していたため、治療初期から破血作用を持つ三稜と莪朮を約3カ月間積極的に使用した。このアプローチにより、瘀血の改善が図られたことが、子宮筋腫の縮小および月経随伴症状の緩和に寄与したと考えられる。結果的に、これらの病態改善が総合的に作用し、妊娠に至る環境が整えられたと推察される。本症例は、漢方治療が複雑な女性生殖器疾患および月経関連症状に対し、有効なアプローチとなり得る可能性を示唆している。

(薬剤師・国際中医師:田之上晃)