漢方併用の凍結胚移植で妊娠・出産 33歳
33歳女性における2人目不妊に対する漢方治療:冷えと低AMHを伴う症例
患者背景
33歳の女性。第一子出産歴あり。2人目を希望し4年1ヶ月。医学的な不妊の原因は特になかったものの、抗ミュラー管ホルモン(AMH)値が1.2ng/mlと低値であった。
不妊治療歴:タイミング療法18ヶ月、人工授精4回、体外受精1回、顕微授精2回で2個凍結し初期胚1個移植(妊娠-)。凍結胚を1個所有。
来局時の状態と漢方診断
- 主訴: 2人目不妊、冷え、夜間頻尿、腰痛、生理周期の短縮、低AMH
- 既往歴: 白血病
- 舌診: 淡紫舌
- 脈診: 尺脈細弱
- その他: 末端冷え、経血塊、生理痛、ストレス、胃痛、あくび、ため息
上記の症状より、以下の体質と診断した。
- 腎虚: 冷え、夜間頻尿、腰痛、低AMH、舌淡紫、尺脈細弱
- 瘀血: 末端冷え、経血塊、生理痛、舌辺暗紅、末梢抵抗高
- 肝鬱: ストレス、胃痛、あくび、ため息、舌辺暗紅
治療方針と経過
- 目的: 凍結胚盤胞移植の妊娠率向上
- 処方: 疏肝を軽め、補腎・活血を重視。牡蠣肉製品と煎じ薬(芎帰調血飲去白朮・烏薬加丹参・白芍・山茱萸・桂枝・党参)を処方。これまで自身で服用していた漢方薬があったが、舌所見と適合しないので服用中止。
- 経過:
- 2か月目: 脈と生理痛が改善。冷えは継続。党参・桂枝を人参・桂皮に変更し、補陽を強化。
- 3か月目: 冷えや疲労感が改善。同処方を継続。凍結胚盤胞移植を行い、妊娠。
- 4~8か月目: 安胎薬を追加し、出産まで継続。
- 結果: 元気な女児を出産。
考察
本症例では、末梢血管抵抗が高く冷えが強い状態であったため、活血補血・理気健脾の芎帰調血飲に、発汗解肌・温通経脈の桂枝を加える処方を採用した。桂枝は、温補腎陽・温通経脈の桂皮と比較して熱性が弱く、表層への作用が強い。そのため、ホルモン剤などで体が消耗している状態では、桂枝で毛細血管などの通り道を整えることが有効であると考える。
(薬剤師、国際中医師:田之上晃)