41歳女性 不妊症に対する漢方治療の症例報告 

はじめに

本症例は、さつま薬局における漢方相談の事例であり、41歳の女性に対する不妊治療の経過を報告する。患者は、医学的な不妊の原因は認められなかったものの、妊娠を希望し、漢方治療を開始した。

症例概要

  • 年齢: 41歳
  • 主訴: 1人目を希望し4ヶ月、不妊
  • 既往歴: 高プロラクチン血症(22.16ng/ml)(カベルゴリン服用歴あり)、鍼灸治療
  • 現病歴: 下半身の冷え、めまい、口喝、生理周期が短い、AMHが低い0.4(ng/ml)など
  • 舌診: 先辺暗紅中紫舌、遅脈
  • 脈診: 弦細
  • 西洋医学的診断: 不妊
  • 漢方診断: 腎虚、血虚、肝鬱

治療経過

初診時 患者は、下半身の冷えやめまい、口喝などの自覚症状を訴えた。舌診、脈診の結果、腎虚、血虚、肝鬱と診断し、以下の漢方薬を処方した。

  • 牡蠣肉製品と亀板膠製品と芎帰調血飲湯去烏薬加白芍・丹参・枳実・桂枝・麦門冬の煎じ薬

2診 高温期が安定し、体調も改善したため、同処方を継続した。

 2週間後に生理が来ないため受診。胎嚢が確認され、妊娠が判明した。

考察

本症例では、漢方薬を服用開始後、短期間で妊娠に至った。これは、漢方薬が患者の体質に合致し、生殖機能の改善に効果を示したと考えられる。

漢方治療の効果

  • 腎虚の改善: 腎は生殖機能の根源であり、腎虚は不妊の原因の一つとなる。本症例では、腎を補うことで生殖機能を改善したと考えられる。
  • 血虚の改善: 血虚は、月経不順や不妊の原因となる。本症例では、補血薬を配合することで血虚を改善し、子宮内膜を厚くする効果が期待できる。
  • 肝鬱の改善: 肝鬱は、ストレスや精神的な緊張から生じ、月経不順や排卵障害を引き起こすことがある。本症例では、疏肝薬を配合することで肝の働きを改善し、ストレス耐性を高めたと考えられる。

AMH値が低い場合の漢方治療 AMH値が低い場合、卵巣の予備力が低下している可能性が考えられる。本症例では、陰虚体質を考慮し、温性の生薬の割合を調整した。温性と寒性の生薬の配合割合は、患者の体質に合わせて個別に調整することが重要である。

今後の課題

AMH値と漢方薬の配合割合の関係については、さらなる研究が必要である。数値化されたデータに基づいて、より客観的な評価が可能になると考えられる。

まとめ

本症例は、漢方治療が不妊治療において有効である可能性を示唆するものである。漢方薬は、患者の体質に合わせて個別に処方されるため、西洋医学では治療が難しい場合でも、効果が期待できる。ただし、漢方治療は万能ではなく、西洋医学との併用を検討することも必要である。

(薬剤師、国際中医師:田之上晃)

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