来局時の状況

34歳女性 病名:円形脱毛症 医学的原因:不明 既往:子供の時アトピー性皮膚炎
○来局時の希望:引越しのためストレスで円形脱毛症が後頭部に1個できた。4ヶ月前から頭皮湿疹で皮膚科にて抗アレルギー剤の内服とステロイド軟膏で治療中。1ヶ月前から円形脱毛症ができたので、漢方薬でできるだけ早く良くなりたい。

漢方による原因分析)

肌は乾燥しやすく元来血虚体質。脱毛前に湿疹があり頭皮の状態が悪く、口唇の瘀班やストレスから瘀血により毛母細胞を滋養できず発症。頭皮の瘀血は生じて間もないため早期に瘀血を改善できれば多発型になることを防げる。
方針)通穴活血、補血は補助

改善結果)

通穴活血湯を基本に煎じ薬で調整。赤芍・乾地黄・桃仁・紅花・酸棗仁・菊花・遠志・党参・黄耆・生姜を1ヶ月服用。脱毛部から新しい毛が生え始める。煎じ薬を継続し、新たに脱毛が生じることもなく、長く治療している頭皮湿疹も9割改善し治療終了。

考察)

 円形脱毛症は、毛母細胞が一時的に何らかの原因によって障害されることで発症し、栄養障害説、遺伝説、ストレス説など考えられているが原因は不明となっている。治療は、ステロイド外用や塩化カルプロニウム外用、難治例では局所免疫療法、PUVA(光化学) 療法、凍結療法などを行う。と西洋医学ではなっている。(あたらしい皮膚科学第2版,中山書店)

 中医学では原因は、血熱・瘀血・気血両虚・肝腎不足などから毛根が滋養を受けることができずに、頭髪が抜け落ちるとなっている。治療は原因に合わせた方剤の内服と桂枝、紅花などのチンキ剤を一つ或は複数を交互に外用する。(中医皮膚科学,東洋学術出版社)
 
 当薬局は内服薬のみで肌の異常な状態を体の内側から改善していくことを目標にしている。赤みや痒みがある炎症疾患であれば数日で軽減させていくことを目標にしているが、円形脱毛症の場合は炎症がないため数ヶ月かけて軽減させていことを目標にしている。
 瘀血は時間経過とともに排除しにくくなり、更に脱毛部が広がっていく。今回のように、発症してすぐに瘀血に対処できると症状の回復が早くなる。