来局時29歳 医学的な不妊の原因:なし (排卵障害がややあり、2~3か月に1回卵胞が卵巣内に残っていることがある)
1人目を希望し1年6ヶ月
○来局時の不妊治療歴:排卵誘発剤を使用してのタイミング療法6か月、人工授精1回。

漢方による原因分析)
○生理痛・排卵通・経血にレバー状の塊・生理前に乳房や下腹部が痛い・肩こり・頭痛・イライラなどから気滞瘀血
○乾燥肌・目の疲れ・めまい・良く夢を見る・くよくよしやすい・便秘と便が固い・冷えなどから血虚
○気力がなく体がだるい・思い悩みやすい・下痢と便秘を繰り返すなどから脾虚
○AMH0.90・生理周期が短い・排卵障害・むくみ・冷えなどから腎虚

方針)
病院治療の成功率を上げるために漢方で活血・養血をして妊娠力を高める。

改善結果)
1か月目、2回目の人工授精で陽性反応。胎嚢・心拍確認。

考察)
やや排卵しにくいものの、大きな問題のない原因不明不妊。
瘀血や血虚体質が顕著で、AMHが低く生理周期26日と短いので、もともと妊娠しにくい腎虚体質です。年齢が若いので、まずは瘀血や血虚を改善して本来の体の機能をしっかり働かせることを目標に漢方を処方しました。

人工授精1周期あたりの妊娠率は5〜10%、4周期以上行った累積妊娠率は40歳未満では約20%と高くはありません。(※)参照 
年齢が若い場合はもともとの妊娠力が充実しています。漢方薬で体を少し整えることで短期間でうまくいった症例です。不妊治療がうまくいかずどんどん年齢を重ねてしまうなど、不妊をこじらせる前に漢方薬で体を整えてみるとよいと思います。(薬剤師:田之上顕子)

(※)日本産婦人科医会 栗林先生・杉山先生の開業医のための不妊ワンポイントレッスン 10.人工授精(AIH:Artificial Insemination with Husband’s semen)