漢方相談による不妊治療の症例報告

患者背景

  • 年齢:32歳
  • 不妊治療歴:タイミング療法2ヶ月(クロミッド)
  • 既往歴:自然妊娠(流産)
  • 主訴:1年6ヶ月間の一人目不妊

初診時所見

  • 漢方診断:腎虚、瘀血、血虚
  • 自覚症状:背中の冷え、足のむくみ、夜間頻尿、腰痛、生理周期が短い、経血量が少ない、経血の塊、手足先の冷え、便秘、動悸、爪が割れやすい
  • 他覚所見:無苔暗紅舌、舌下静脈怒張、AMH 1.04 ng/ml、肌の乾燥

治療方針

補腎、養血を軸に、活血化瘀を行い、自然妊娠を目指す。病院での不妊治療も並行して行う。

治療経過

  • 1-4ヶ月目: 亀板膠製品、杞菊地黄丸、当帰製剤、丹参製剤を処方。体調に合わせて漢方薬を調整しながら、病院でのタイミング療法を継続。
  • 5-6ヶ月目: 補腎薬を亀板膠製品、杞菊地黄丸から牡蠣肉製品に変更。タイミング療法を継続。
  • 7-9ヶ月目: 漢方薬治療に専念。
  • 10-12ヶ月目: 新しい不妊治療クリニックで子宮内ポリープを発見。漢方に水蛭製品を追加し、腫瘤の破血を図る。
  • 13-14ヶ月目: 体外受精を勧められ、採卵に向けて体づくりを開始。漢方薬は水蛭製品から亀板膠製品に変更。
  • 15ヶ月目: 低刺激で5個採卵。体外受精・顕微授精にて1個の新鮮胚を移植し、妊娠。4BBの胚盤胞を凍結。その後、牡蠣肉製品と安胎薬を継続。
  • 16ヶ月目: 順調に経過し、不妊治療専門クリニックを卒業。元気な男の子を出産。

治療効果

漢方治療により、体調、脈、舌、基礎体温などが改善し、自然妊娠できる状態になった。しかし、自然妊娠に至らなかったため、体外受精にチャレンジ。体づくりがしっかりできていたため、1回の採卵で妊娠に成功し、グレードの良い胚盤胞も凍結できた。

考察

本症例は、腎虚、瘀血、血虚を合併した不妊症であった。漢方治療により、これらの体質改善を図り、自然妊娠の可能性を高めた。体外受精に至った要因としては、子宮内ポリープの存在に加え、漢方治療による体質改善が大きく貢献したと考えられる。(薬剤師・国際中医師:田之上晃)