漢方相談による不妊治療における症例報告

1. はじめに

本報告は、さつま薬局における漢方相談の症例報告である。35歳の女性が、1年4ヶ月の不妊治療ののち、漢方治療を開始し、1回目の体外受精で妊娠に至ったケースを紹介する。

2. 症例

2.1 患者背景

  • 年齢:35歳
  • 主訴:1年4ヶ月間の一人目不妊
  • 既往歴:子宮内ポリープ(着床への影響なし)、高プロラクチン血症
  • 既往治療:タイミング療法14ヶ月、人工授精2回
  • 家族歴:なし

2.2 来局時現症

  • 自覚症状:全身の冷え、寝汗、腰痛、夜間頻尿、目の疲れ、耳鳴り、便通異常(硬い)、生理前乳房痛、頭痛、動悸、生理痛、生理量減少、
  • 他覚所見:紅舌、

2.3 漢方診断

  • 腎虚(陰>陽):全身の冷え、寝汗、腰痛、夜間頻尿、耳鳴りなど
  • 血虚:生理量減少、目の疲れ、動悸など
  • 瘀血:生理痛、子宮内ポリープなど
  • 肝鬱:便通異常、生理前乳房痛、頭痛、紅舌、既往歴の高プロラクチン血症など

2.4 治療方針

  • 漢方薬による体質改善と西洋医学治療(人工授精)の併用
  • 腎陰を補い、肝を疏通させ、血を養い、瘀血を化す
  • 処方:煎じ薬の芎帰調血飲湯加赤芍、丹参、炒麦芽、牡蠣肉製品、亀板膠製品

2.5 治療経過

  • 治療開始2ヶ月後:便通異常のため生薬の割合を調整
  • 同周期の人工授精にて妊娠(胎嚢確認)

3. 考察

本症例は、西洋医学的な不妊の原因が特定できないものの、漢方的な体質改善を行うことで、妊娠に至った。特に、腎虚、血虚、瘀血、肝鬱の諸症状に対して、個々の体質に合わせた漢方処方を用いることで、生殖機能の改善に繋がったと考えられる。(薬剤師・国際中医師:田之上晃)