症例報告:漢方治療による不妊症改善と体外受精成功事例

症例概要

  • 初診時: 35歳、一人目の妊活開始3ヶ月。タイミング療法3ヶ月実施済み。
  • 主訴: 妊孕性(にんようせい)の低下
  • 現病歴: 日中のトイレ回数が少なく、夜間頻尿、腰痛、膀胱炎の既往、睡眠時覚醒、眼精疲労、便秘、数脈を認める。
  • 漢方診断: 腎虚、血虚と診断。
  • 治療方針: 補腎と補血を基盤に、体質改善を図りながら、西洋医学的な不妊治療と併用する。

治療経過

初期段階(1~3ヶ月)

  • 牡蠣肉製品と芎帰調血飲加何首烏の処方により、体調改善が見られた。

中期段階(4~7ヶ月)

  • 生薬の烏薬・白朮を丹参・白芍に変更して、不妊治療専門クリニックへ転院。
  • 初めての人工授精で妊娠するも、8週で流産。

後期段階(9ヶ月以降)

  • 生薬を微調整しながら継続。
  • 人工授精を5回試みるも妊娠せず。
  • 補腎の生薬(肉従容・女貞子など)を追加し、体外受精へ。
  • 1回目の胚移植で妊娠し、無事出産。

治療効果

  • 漢方治療により、基礎体力を向上させ、生殖機能の改善に繋がったと考えられる。
  • 体外受精の成功率向上に貢献した可能性がある。
  1. 初期治療: 牡蠣肉製品と芎帰調血飲加何首烏を処方。体調改善がみられる。
  2. 生薬変更: 生薬を烏薬・白朮を丹参・白芍に変更。不妊治療専門クリニックへ転院し、人工授精を開始。1回目で妊娠し牡蠣肉製品と当帰製剤継続するも8週で流産。
  3. 継続治療: 牡蠣肉製品と煎じ薬を継続。人工授精を5回実施するも妊娠せず。
  4. 体外受精へ: 補腎の生薬(肉従容・女貞子など)を追加。体外受精を行い、3個の胚盤胞を凍結。翌周期の移植で妊娠。
  5. 安胎治療: 安胎の漢方処方を継続し、無事安定期へ。
  6. 出産: 元気な女児を出産。

考察

本症例では、漢方治療により、腎虚と血虚を改善することで、子宮内膜の血流改善や卵子の質向上を図った。西洋医学的な不妊治療と併用することで、短期間での妊娠に至ったと考えられる。

体外受精の臨床妊娠率や分娩率を考慮すると、本症例の妊娠は、漢方治療による体質改善が大きく貢献した可能性が示唆される。(薬剤師・国際中医師:田之上晃)