後鼻漏に対する漢方治療:症例報告

患者背景

  • 年齢: 53歳
  • 性別: 女性
  • 主訴: 黄色の鼻汁が喉に流れ込み、イガイガする(後鼻漏)、鼻詰まり
  • 現病歴: 風邪をきっかけに症状が悪化し、西洋薬による治療効果が見られない。

漢方医学的所見

  • 自覚症状: 慢性的な疲労感、冷え性、夜間の熱感、頻尿、便秘、むくみ、左耳鳴り
  • 舌診: 舌暗紫・厚白苔(舌の色が暗紫色で、舌苔が厚く白っぽい)、舌下怒張(舌の下が怒張している)
  • 脈診: 脈数滑(脈拍数が多く、滑りやすい)

弁証論治

弁証: 風邪の侵入後に体内に熱がこもり(化火)、肝経に湿熱が停滞し、鼻淵(鼻からの過剰な分泌物)を引き起こしている状態と判断した。

論治: 瀉火利湿エキスと浸膏鼻炎丸料エキスを併用することで、体内の熱を冷やし、湿気を除去し、鼻の症状を改善することを目指した。

治療経過

  • 投薬: 瀉火利湿エキスと浸膏鼻炎丸料エキスを1ヶ月分処方。
  • 効果: 服用数日で鼻症状が改善したと報告された。

考察

鼻淵は、漢方では鼻から濁った鼻汁が大量に流れ出る状態を指し、本症例では湿熱が主な病因と考えられた。浸膏鼻炎丸料エキスは鼻淵の治療に用いられるが、本症例のように体内に熱がこもっている場合には、清熱薬を併用することでより効果が期待できる。

まとめ

本症例は、後鼻漏を呈する53歳女性に対する漢方治療の1例である。西洋薬で効果が見られなかった症状に対して、漢方薬の瀉火利湿エキスと浸膏鼻炎丸料エキスを併用することで、数日で鼻症状が改善した。この結果は、後鼻漏の治療に漢方薬が有効である可能性を示唆する。

今後の展望

本症例のように、後鼻漏の治療には、西洋医学的な診断に加えて、漢方医学的な体質や症状の評価が重要である。さつま薬局では、今後も個々の患者に合わせた漢方治療を提供していく。
薬剤師・国際中医師:田之上晃

参考文献
(1)全訳中医耳鼻喉科学第2刷、たにぐち書店