漢方相談事例集|不妊症で悩んでいた32歳のケース

来院時の状況

  • 年齢: 32歳
  • 希望: 第一子妊娠
  • 治療期間: 9ヶ月
  • 既往歴: 子宮筋腫
  • 治療歴: タイミング療法1回、人工授精1回
  • 症状: 冷え、浮腫み、残尿感、夜尿症、腰痛、紫舌、やや遅脈、末端の冷え、肩こり、生理前の頭痛、子宮筋腫、右卵管閉塞、左卵管狭窄、不眠、食欲亢進、腹満、感情の起伏、便秘気味、眼の疲れ・乾燥

漢方による原因分析と治療方針

さつま薬局での漢方相談では、Aさんの症状から、以下の体質と不調の原因を特定しました。

  • 腎陽虚: 冷え、浮腫み、腰痛など、体の温まりにくい状態
  • 瘀血: 末端の冷え、肩こり、子宮筋腫など、血の流れが悪くなっている状態
  • 肝陽>陰: 不眠、イライラ、眼の疲れなど、肝の機能が亢進している状態

これらの体質を改善し、子宮・卵巣機能の向上、卵管の疎通性を高めるために、以下の治療方針を立てました。

  • 補腎陽: 体を温め、腎の働きを強める
  • 活血: 血の巡りを良くする
  • 養血: 血を補う
  • 疏肝: 肝の働きを整える

治療経過と結果

  • 初期治療: 牡蠣肉製品と、芎帰調血飲去白朮・烏薬加白芍・丹参・柴胡の煎じ薬30日分を処方
  • 経過: 2~3診病院治療を続けながら、同処方と煎じ薬30日分ずつ処方。4診、睡眠が改善しないため煎じ薬の柴胡などを抜いて酸棗仁などを足し帰脾湯の方意に変更。体外受精にステップアップし、新鮮胚移植にて妊娠、その後心拍確認。

考察とまとめ

33歳の女性における新鮮初期胚移植の妊娠率は33%と報告されていますが、Aさんはわずか1回の移植で妊娠に至りました。これは、漢方薬による体質改善が、妊娠率向上に大きく貢献したと考えられます。

漢方薬が効果を発揮するためには、冷えなどの体質に合った漢方薬を適切に選択することが重要です。さつま薬局では、一人ひとりの症状に合わせたオーダーメイドの漢方薬を提供し、体質改善をサポートいたします。(薬剤師、国際中医師:田之上晃)

参考文献(1)日本産科婦人科学会,2021年体外受精・胚移植等の臨床実施成績