来局時43歳 医学的な不妊の原因:高プロラクチン血症、
2人目を希望し6ヶ月
○来局時の不妊治療歴:タイミング療法2ヶ月、体外受精2回、顕微授精1回(3回目の凍結胚移植で妊娠するが心拍停止)

漢方による原因分析)
○冬場の足の冷え、腰痛、年齢などから腎虚
○子宮内膜ポリープ(切除済み)、紅紫舌などから瘀血

方針)漢方で体づくりをしてから凍結胚移植をする予定。体質を判断するための所見がは少ないが、体外受精などで使用するホルモン剤など生じやすい瘀血を排除し、消耗した腎精を補充し陰陽のバランスを整えることで移植は胆への子宮の適応力を上げ妊娠率の改善を目指す。

改善結果)
芎帰調血飲加白芍・三稜・莪朮・桂皮の煎じ薬、牡蠣肉製品と紫河車製品を開始。
3ヶ月目、以前より疲れにくく過ごせているが軟便がつづいているため三稜・莪朮など活血薬を減らし、黄耆・人参・山薬・補骨脂など健脾補腎陽薬追加して継続。
5ヶ月目、移植前の周期で牛膝・紅花を追加。
6ヶ月目、煎じ薬は十全大補湯減当帰去地黄加枸杞子・杜仲・続断・補骨脂・香附子。便が緩くなりやすいので地黄の代わりに枸杞子、当帰を1gに減らした。服用3週目に凍結胚移植。
7ヶ月目、判定前。着床障害を防ぐため活血薬の丹参を少量追加。妊娠陽性反応、その後胎嚢確認。

初診時、脈は有力の遅脈であった。この場合証は実寒証であることが多いのだが、相談者は実寒証を示す所見がなく、真逆の証の傷寒論陽明病かといえば胃実熱である症候の便秘や手足の多汗もないため、脈証以外で判断していった症例であった。高強度の運動をしているわけではないのでスポーツ心臓も考えにくく、気滞血瘀により気の推動作用が抑えられたことによる遅脈と考えた。不快な体調は余りない方でも瘀血を改善する生薬を使うことで、高齢でも妊娠できたことから、凍結胚移植においても活血薬を適切につかうことで妊娠率の改善が見込めると考える。