漢方併用の凍結胚移植で妊娠 34歳
漢方相談における不妊治療の症例報告
1. 患者背景
- 年齢:初診時33歳
- 主訴:1人目不妊(1年7カ月)
- 既往歴:TSH:3.0のためチラーヂン服用中
- 治療歴:タイミング療法6ヶ月、人工授精3回
- 生活習慣:県外在住、仕事多忙
2. 初診時所見
- 漢方診断:腎陽虚、瘀血
- 自覚所見:冷え、疲労感、腰痛、末端冷え、経血塊、生理痛、
- 他覚所見:遅脈、暗紅舌、基礎体温変動大、血流計末梢抵抗大
3. 治療経過
3.1 初期治療(1回目人工授精まで)
- 方剤:芎帰調血飲湯加丹参、白芍、延胡索、牡蠣肉製品
- 目的:補腎陽、活血化瘀
- 効果:冷え感の若干の改善が見られたものの、1回目の人工授精は失敗
3.2 中期治療(漢方薬中断~2回目人工授精まで)
- 治療:人工授精継続
- 理由:患者側の希望により漢方薬を中断
- 結果:6回の人工授精を継続するも妊娠に至らず
3.3 後期治療(顕微授精開始~妊娠)
- 治療:漢方薬再開(方剤は体調に合わせて調整)、顕微授精
- 目的:体質改善、着床率向上
- 結果:3回目の凍結胚移植で妊娠、心拍確認
4. 妊娠中治療
- 方剤:牡蠣肉製品、当帰阿膠製剤
- 目的:母体と胎児の健康維持
5. 考察
本症例は、西洋医学的な不妊の原因が特定できないものの、漢方的な視点から腎陽虚と瘀血が認められた。特に、冷えや生理痛が強く、瘀血が体質として根強いことから、着床障害が疑われた。
活血化瘀を目的とした治療を行った結果、3回目の凍結胚移植で妊娠に至った。しかし、仕事が忙しく、漢方薬を中断する期間があったことや、体質改善が思うように進まないことにより、患者は焦りを感じていた。
本症例は、体質改善には時間がかかること、そして漢方薬を継続することが重要であることを示唆している。また、瘀血が強い体質の場合、活血薬の適切な選択と調整が着床率向上に繋がる可能性が示唆された。
6. 結語
本症例は、さつま薬局の漢方相談における不妊治療の一例である。漢方薬は、西洋医学では治療が難しい不妊症に対して、体質改善という観点からアプローチできる可能性がある。(薬剤師・国際中医師:田之上晃)